Healing Essayヒーリング・アーツとともに
ヒーリング・タッチは音楽的
ヒーリング・タッチは心身の極めて繊細な感性に基づく術[わざ]だ。習熟すると、自他の身体内に深浅遅速、広狭強弱、自由自在なる空間(立体)的波紋を起こすことが可能となる。いくつもの波が出会い、結ばれ、打ち消し合い、高め合い、新たな波形を次々と産み出し、それらすべてが一大ハーモニーを奏でてイノチの交響楽となっていく。触れ合いの圧力をコントロールすれば、ドップラー偏移のごとき効果が起こり、内的波紋にさらなる複雑さ、豊かさ、奥行きと深みがつけ加えられる。
あなた方が想像する以上に、ヒーリング・タッチは音楽的だ。その本質において、私はヒーリング・タッチと音楽の違いを認めることができない。
片や触覚的であり、もう一方は聴覚的だ。窓は違うが、同じ太陽からの光が射し込んでいる。窓には様々な彩[いろど]り、様々な意匠のステンドグラスがはめ込まれているので、それぞれまったく違う相[すがた]に見える。が、その本質--光--は同一のものだ。
高木一行著『奇跡の手 ヒーリング・タッチ』より
クラシック音楽は「建築的」と表現されることが多いのですが、それは音楽の中に「上下・左右・前後」という6つの要素があるからです。
建築でいうと、「上下」は柱や階段のようなもの、左右は部屋の広さ、前後は奥行き、つまり簡単に表わすと、段ボールのように箱形の建築物では、「縦・横・高さ」が6つの要素を包含しています。
6つの要素が複雑に絡まり合って、彩り豊かな響きが生まれるのですが、ヒーリング・タッチにおいて「粒子的」と表現される要素(ファクター)は、音楽における「リズム」や「テンポ」に置き換えて考えることもできます。
先日、ヒーリング・アーツ・トレーナーの皆さんが、<蓮華掌・第2段階>(『奇跡の手 ヒーリング・タッチ』に収録されているヒーリング・アーツのメソッド)の実践報告をしてくださいました。
その中で、道上健太郎さん(ヒーリング・ネットワーク山口/毘沙門会主宰)が以下のようなご報告をされています。
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<蓮華掌 第2段階>について実践させていただきました。
1拍に1のオンに対して2拍で1のオフと、倍の時間をかけて行なっていくと、これまで修練で身体の粒子感覚そのものが細かくなっていくものと別に、時間の感覚が加わり、もう一つ別の次元が重なったより密で細かいドットの粒子感覚が深まっていくのが感じられました。
何度か執り行なっていく内に、これまで自分があまりよく解っておらずに「1拍で1のオン → 1拍で1のオフ × 2拍」と倍の時間だけではなく倍の時間で倍の量のオフを行なうことと混同していたことが判明してしまいました。
正確には「1拍で1のオン → 1拍で0.5のオフ × 2拍」だったのですね。
「あっ」と驚いて間違えていたものと現在のものを繰り返し比較していくうちに、バランスをとる焦点を切り替えたとたんに粒子の感覚が細かく軽やかなものになるのがはっきり感じ取れるようになってきました。
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道上さんのご報告にある、
「1拍で1のオン → 1拍で1のオフ × 2拍」と、
「1拍で1のオン → 1拍で0.5のオフ × 2拍」というのを、音楽で表わすことができないだろうか、と考えました。
その1 オンの音楽
その2 オフの音楽
その1(オンの音楽)とその2(オフの音楽)を組み合わせて、
「1拍で1のオン → 1拍で1のオフ × 2拍」を表わしてみます。
その3 オンの音楽(1)×1→オフの音楽(1)×2
聴いていただくとわかるのですが、オンの音楽1回の後に、オフの音楽が2回、繰り返されています。
この音楽は5つのパート(楽器)で構成されていますが、そのうち2つのパートは、オフの音楽において、オンの音楽で使われている旋律を、鏡に映したようにひっくりかえしたモチーフとなっています。そして、オンの音楽では、「オンのリズム(表拍子にアクセントがつく)」、オフの音楽では「オフのリズム(裏拍子にアクセント)」を使ってドラム(リズムセクション)を入れています。
「オンのリズムとオフのリズム」について、詳しくはこちらをご参照ください。
そして<蓮華掌 第2段階>を正しく実践した場合の、「1拍で1のオン → 1拍で0.5のオフ × 2拍」を音楽で表わすとどうなるのでしょうか!?
その4 オンの音楽(1)×1→オフの音楽(0.5)×2
・・・・どうでしょうか。オフの音楽に変わった途端、時間感覚が一気に次元転換し、オフの世界が開き、鏡の国に入ったかのような感覚となります。そして注目すべきは、音楽が終わった後の「オフ感覚」の深さです。
その3でお聴きいただいたモチーフでは、オフの音楽が2回繰り返された後の余韻は、それほど深くありませんでした。しかし、その4を聴いた後の余韻の深さは相当なものがあります。
その3も、その4も、「オフの音楽」が奏でられている時間の長さは、まったく同じです。にもかかわらず、これほどの違いが起こるのですから、<蓮華掌 第2段階>の深みは底知れないものがあります。
今回は音楽を2倍遅くしましたが、これが3倍、4倍・・・と遅くなっていったら、一体どういうことになるのでしょう。人間としての意識を保っていられるものなのか、それとも「死」に限りなく近づいていく感覚となるのか、いずれにせよ、瞑想の奥深い境地へ至る道であることは間違いないでしょう。
音楽演奏においては、同じフレーズをゆっくり、時間をかけて演奏するには、フレーズ間に存在する時間(テンポ)感覚を、かなり正確に把握する能力が求められます。それがヒーリング・タッチにおける「粒子感覚」の認知と合致していると私は思います。
テンポがとてもゆっくりな曲だとしても、ひとつひとつの音の間には、無限に小さな粒子(リズム)が存在していて、それを自在に操れると、より奥行きのある、感動的な音楽になります。
より細やかな表現力を持つ演奏家は、より細やかな粒子感覚を持っていることになり、ヒーリング・タッチの熟達度が、演奏における熟達度と比例していることがよくわかります。
※やや専門的な話ですが、今回創作した「オンの音楽」と「オフの音楽」は、「その1」がそれぞれ「1拍」に相当するモチーフですが、実際には「1小節(4拍)」です。1拍だけの音楽ではあまりにも短過ぎて(1回の気合に相当するくらいの長さですので)、聴いても理会がついていかないため、時間を引き延ばして表現してあります。
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最後に、ほかのトレーナーたちのご報告を紹介いたします。
報告1
<蓮華掌 第2段階>を実践してみました。
以前実践してみた時には難しいという感覚だけが残ってしまったのですが、オフのプロセスをゆっくりにしていくということが徐々に感覚として理解できてくる時がありました。その時には時間の感覚もゆったりとしたものになり、オフに伴って起こってくる身体の感覚もより奥深く精妙になっていきました。
実践の後、このオフの感覚はどこかで感じたことがあるように思えてきました。ふと先日ヒーリング・ディスコース中の動画を観ていた時に、高木先生が武術的なシュチュエーションで技をおかけになっているシーンが思い出されました。それまで滑らかに流れるように動かれていた高木先生が急にゆっくりとした動きに変わられ、技を受けている方も不思議なほどゆっくりと柔らかに精妙に波打つような一種独特の動きに変わるシーンでした。その不思議な印象はこのオフの感覚に通じるものがあると感じたのでした。そのように感じだすとヒーリング楽曲を聴いている時に感じることがある他の音楽にはない不思議なゆったりとした感覚もオフ感覚に基づいたものではないかと感じられました。
<蓮華掌 第2段階>の実践を通じて、ヒーリング・アーツがオフ感覚に基づいていることへの理解が深まったように感じました。
(東前公幸 ヒーリング・ネットワーク関西)
報告2
今まで、オンをオフに切り替える際、オンの2倍の時間をかけてオフにすると、体の中をゆっくりと、確実にほどけていくのが実感できました。
やはり、今までは相当雑だったと思います。おそらく、完全にほどくことができないまま、ブロックと化していたのではないでしょうか。さらに、それを放置していくと、麻痺して、様々な病気の原因にもなりうるもの、だと言えそうです。
オンと同じ程度の時間でオフにしようとすると、そのあたりの麻痺してしまった感覚を呼び起こすのはかなり難しく思えます。
オフに時間をかけて、緩む感覚を味わうようにして感じていくと、より、自分自身の内面を感じることができるようになりました。
温泉の効能がゆっくりとしみわたっていく感覚とも共通しているようでもあります。
自然と余計なことを考えずに、そのゆったりとした感覚だけを味わうので、二拍、三拍と長くしていくにつれ、瞑想状態に近づいてもいるようです。
日常、不愉快な感覚に心身を病んでいるということでしょう。
自殺者が年間3万人(10万を超えるという説もあり)、死刑制度には賛成しつつも冤罪問題には無関心、という今の日本人の精神状態が、それをよく示していると思います。
(栁田豐 ヒーリング・ネットワーク東海)
報告3
掌の中央(掌芯)に注意を向け、「凝集する」ことを1として、「パッとやめて緩むに任せる(=レット・オフ)」時間を2、3、4・・・と引き伸ばし、オフの流れを途中で途切れさせないように注意をして身体を委ねていきました。すると<蓮華掌 第1段階>のときよりも手の中心である掌芯がジンジンとしびれるような感覚が生じ、手の外側ではなく、内側を通って前腕、上腕、体幹へと緩みの波が伝わっていきました。そしてその波が全身に行き渡るや否や、立ち上がって、活性化した身体の内側から溢れ出る動きに身を委ねていきました。
<手ほどき 第2段階>の立って片手を振り、もう一方の手を、今回の<蓮華掌 第2段階>の要領で実践し、クロスオーバーさせてみました。すると蓮華掌がゆっくりと緩み開かれるにしたがって、身体の裡に働きかけようとする様々な身体運動が誘発されたため、動くがままに身体を揺さぶって振りほどいていきました。その結果、全身の隅々にまで活力が満たされ、また普段血の巡りが悪くなりがちな顔などにも生気がみなぎり、健康感に溢れた身体へと調えられたことを実感しました。
ヒーリング・アーツをある一定の期間、正しく実践を続けていけば、心身ともに真健康へと導かれていくことを改めて実感いたしました。
(平川晋一 神奈川樂会)
報告4
<蓮華掌 第2段階>を実践すると、凝集→レット・オフによって生じる粒子感覚がより細やかとなり、掌の内部の空間が充実する感覚が現われてきました。
また、その感覚をもとに再び<蓮華掌 第1段階>へ戻ると、それはこれまでの「1拍」ではなく、より粒子的なプロセスとなっていることに気づかされました。
二つの蓮華掌の段階を繰り返し実践していると、凝集と拡散の変化が、より波動的に感じられるようになってきます。
シンプルな方法で根底から自身の在り方に変化をもたらす蓮華掌の効能にあらためて驚きと有り難さを感じています。
(佐々木亮 神奈川樂会)
報告5
<蓮華掌 第2段階>を練修してみると、オフをゆっくりと意識する事により、オフ感覚が散逸する事なく、より明瞭に意識化でき、裡の感覚の容積が増し開拓されていくような感覚、より豊潤な感覚が生じるようになりました。裡に意識の光りが灯り中心からエネルギーがわいてきます。
以前は良く理会出来てなかったのですが、ヒーリング・アーツを熟達する上で、極めて重要な練修の段階だと理会出来ました。ありがとうございました。
(斉藤実也 ヒーリング・ネットワーク東海)
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夫・高木一行から送られてきた最新の手紙『刑務所より愛を込めて』第21回が公開されました!
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写真:Healing Photograph スライドショー1-21<音霊マリンバ>より。